LOGINシリウスは自分の実家、ブラッドレイ家に帰って来ていた。
しばらくぶりに戻った自室のベッドに彼女を横たえる。
「ナディアちゃん」 頬を撫でて声をかけてみるが彼女は目を覚まさない。シリウスは眠ったままのナディアの服に手をかけた。 服を脱がせて下着を取ると大きくて形の良い胸がふるりと露出する。シリウスは胸の間に顔を埋めて深く深く呼吸して、ナディアの匂いを身の内に取り込んだ。 「ナディア、愛してるよ…… やっと俺のものに……」 一通り柔らかな感触を楽しんでから、彼女の衣服を全て取り去る。太ももを掴んで脚を広げると、彼女の薄い陰毛の中心部にある花が開いた。 シリウスは長く綺麗な指で花弁の上部にある花芯に触れる。摘んでコリコリと潰すように刺激すると、花芯が勃ち上がってきて、眠るナディアの呼吸が早くなった。 シリウスは指を一本花の中心に沈み込ませる。そこは既に蜜をたたえていて、指を動かす度にぬちゅぬちゅと卑猥な音を立てた。 シリウスは指を曲げてナディアの良い所を刺激した。彼女の体のどこがいいのかは知り尽くしている。何度も何度もナディアに触れて、シリウスは研究と開発を繰り返してきた。ナディアは意識のないまま、もうずっとシリウスに可愛がられていた。 ――しかし今回の失態はナディアとのこの秘密の営みのせいだった。 『ミランダ』という架空の少女に化けたシリウスは、毎日のようにナディアとお風呂に入っていた。最初の頃はそれでも我慢していたが、大好きな女の子が全裸で目の前にいることに耐えきれずに、そのうち思いは爆発した。 二人きりの入浴中、シリウスは魔法でナディアの意識を奪い、その体に触れるようになった。 注意はしていたつもりだった。あまり長い時間浴室を独占しているとおかしく思われるし、刺激が強すぎるとナディア自身がきっと違和感に気づく。だから営みはごく短時間。 獣人の里への潜入中は正体がばれないように、どんな時でも変幻しているという自分なりのルールを作っていたから、もし覗く者がいれば女同士が乳繰り合っているようにしか見えなかっただろう。 もっとも、誰も覗けないように魔法は使っていたからそれは無理なのだが。秘密の睦事は誰にもばれないようにしていたつもりだった。もちろん本人にも。
普通なら毎回風呂場でいつの間にか寝ていることをおかしく思ってもいいはずだが、ナディアがあまり細かいことを気にしない性格で助かった。
しかしシリウスは油断した。魅惑的なナディアの体に溺れすぎていたのかもしれない。
シドが不在と思い、いつもは魔法で変えるその場の匂いを変えずに手を抜いてしまった。
それを予定よりも早く「狩り」から帰ってきたシドに気づかれた。
『過去視』で少し検証したが、ナディアと風呂でイチャイチャしていたのは、シドが魔の森に入って間もない頃までた。 匂いに敏感すぎるあの男は、そんな距離からナディアとの営みに気づいてしまった。 (化け物か) シドは『ミランダ』が同性愛者だと思ったようだった。 シドは男を受け入れることが出来ない女の体を暴いて、嫌がるのを承知で無理矢理突っ込んで楽しみたかったのだろう。 愛する彼女の父親ではあるが、本当にあの男は鬼畜だ。ケツからヤられるようなことにならなくて本当によかった。 「う……うっ……」 手の動きを早めて追い立てていると、ナディアが呻いて体を痙攣させた。彼女は眠りながら果てたようだった。シリウスは蜜で溢れた穴の中から指を引き抜いて、股間に顔を近づけて蜜を啜った。舌で花弁を舐め上げて、花芯に吸いつく。 シリウスが舌で転がしているナディアのクリトリスはとても敏感だ。 感度が良くなるように育てたのはシリウスだ。気持ちいいことをたくさん吸収できる体になって、これから訪れるであろう自分との一生涯に渡る性生活を有意義で大好きなものにしてほしかった。 シリウスは時間を気にせずナディアの体に触れられるのが嬉しくて、執拗に責め立てた。何度も何度も。 「あっ…… ふぁぁぁ……っ…… あぁっ……」 眠りながら柔く高い声で何度も喘ぎ、体をしならせているナディアのまぶたの縁には涙が滲んでいる。 シリウスはナディアの喘ぎ声が大好きだった。たくさん喘いで気持ちよくなってほしい。ナディアは夢の中でも絶頂を感じているはずだ。 本当は指よりももっと大きなものを入れたかったが、ずっと我慢していた。でももう我慢しなくていい。ナディアと番になるという積年の夢が叶う。 シリウスは嬉しすぎてタガが外れていた。ナディアが喜んでくれるのが嬉しくて、何度もイかせてしまった。 眠ったまま荒く呼吸を繰り返すナディアを見下ろしながら、シリウスは服を脱いだ。ナディアのそこは大洪水でも起こったかのようにぐしょぐしょになっている。標準より大きめの自分のモノでも入るだろう。 (いよいよ貫通式だ) ナディアの上に覆い被さり、一物の先端を花弁につける。脚をさらに開かせて先端で穴の入口を広げてみるが、シリウスのモノを呑み込める大きさはしていない。 それでも動かないように抑えて腰を進めれば、たぶんそのまま入ってしまうだろう。 (ナディアの処女を頂いて、番になって、結婚できる) シリウスはナディアから番になることも結婚することも合意は得ていない。目を覚ました時に番になったと知ったら彼女は怒るかもしれない。 けれど、ナディアが敵方に当たる自分と一生の伴侶になることを同意してくれるとは限らないのだから、機会を逃さず確実に奪いたい。 強引だと責められようが、シリウスにとって生涯の伴侶はナディア一択だった。 番になってしまえば否が応でも彼女は自分を拒否できなくなる。絶対に手に入れたかった。 しかし、シリウスと兄には目指すべき場所があり、そのためにナディアの父親には死んでもらう必要があった。 (ナディアはそれを知ったら嫌だと言うかな? 泣くかな?) ――自分たちの幸せのために。 ――自分たち兄弟が、目標とする世界のために。 ――速やかに、できる限り超素早く。 ――あの義父上様には、死んでいただかねばならない。シリウスは、八歳になり美少年具合に磨きがかかる愛息のオリオンと、第四子妊娠中で安定期に入ったナディアを連れて、侯爵になった兄ジュリアスに頼み、領地のブラッドレイ侯爵家で行われるお茶会に参加させてもらうことにした。 そのお茶会は貴族が主な参加者だが、兄ジュリアスと違って平民であるシリウス一家は、兄の家族枠とでも言うべきか、有り体に言えば縁故枠として特別に入れてもらった。 お茶会には平民の商人も混ざっていて、同じく平民であるシリウスたちがいてもそこまで白い目で見られることもなく、また、英雄と評されることもあるジュリアスの威光の影響もあってか、ジュリアスの実弟一家ということで、参加者たちには概ね温かく迎え入れてもらえたと思う。 シリウスがジュリアスに、「貴族の催しに自分たちも混ぜてほしい」と頼んだのは始めてだった。 ナディアには、「貴族のお茶会? マナーわからないけど?」と言われたが、妊婦だから飲めない食えないと通せば大丈夫だと言い、二の足を踏んでるところにお腹を締めつけないタイプの綺麗なドレスを着せて、「オリオンのためだから」と説き伏せ、無理矢理参加することを了承させた。 四歳の無邪気な双子たちは、平民が走り回って場を引っ掻き回したらまずいと思い、調子のよい母のロゼとシオンに任せてきた。 貴族向けのパーティ参加が初めてのオリオンは、会場に入るなり華やかな雰囲気にキョトンとしていたが、走り回ることもなく、シリウスの言いつけ通り行儀よくできていた。 オリオンは最初は緊張もしていたが、会う度によく可愛がってもらえる伯父のジュリアスや、遊び相手の従兄ジュライもいたので、次第に緊張もほぐれたようだった。 お茶会には、子供の――とりわけ女子の――姿がわりと多かった。なぜならば、ジュリアスとその妻フィオナの息子で、ブラッドレイ侯爵家嫡男であるジュライの婚約者候補に名乗りを上げようと、貴族たちがこぞって年齢の見合う娘を参加させていたからだ。 今回のお茶会の趣旨はジュライの婚約者選び、というわけではないが、国民からの人気も高いブラッドレイ侯爵家と縁続きになりたい家はそれなりに多いようだった。 お茶会が始まるなり、ジュリアスに似たイケメン少年ジュライは同じ歳くらいの令嬢たちに揉みくちゃにされかけたが、すぐに脱兎のごとく逃げ出していた。 ジュライの後を追って令嬢たち
オリオンが生まれてから八年が経った。 ナディアとの間には長男オリオンとの後に男女の双子を授かっている。 双子は四歳になり、現在ナディアは第四子妊娠中で、シリウスの計画通り子沢山街道まっしぐらだった。 ブラッドレイ邸にはレオハルトやジークオルトもいるから、常に子供の声が絶えずに煩いくらいで、ナディアも子供に囲まれて幸せそうではあるものの、日々忙しくしている。 十五歳になり年々大人びて女子力を高めつつあるシオンがよく手伝ってくれるので、助かっているそうだ。 母ロゼは自身と同じように子だくさんになりつつあるナディアの体調を何かと心配していて、孫の面倒を見なければと奮い立ってもくれていて、一時期よりは塞ぎ込むことも減り、番のいない日常を受け入れて生きているようだ。 シリウスは、メロディとルーファウスと名付けたその姉弟が、シドの処刑の日に『未来視』で視た、父アークと母の間に生まれるはずだった子供たちなのではないかと、どうしても思えてしまって、あの時視た『未来視』の通りに、時折複雑な気持ちで双子を見つめている自分がいることに気づく。 シリウスの中では、あの時に自分が『未来視』をすべて把握することができてさえいれば、父は死ななかったのではないか、という後悔と、自分の無力さに打ちひしがれる思いは、ずっとある。 けれど、父が自分の身代わりにならなければ、シリウスこそが死んでいたわけで、今ある幸せを感じられることもなかったのだろうと思う。 シリウスは、自分にその身を捧げてくれたような父に最大限の感謝をしながら日々を生きねばと思っているし、同時に、やはり罪悪感のような気持ちもぬぐいきれなかった。 シリウスは、アークにナディアとの結婚を反対されて以降、父が亡くなるまでは反発ばかりしていて、最後の会話なんて喧嘩別れの言葉だった。「こうすればよかった」「ああすればよかった」という後悔は尽きない。 父に会いたくて、何度か「死者蘇生の魔法」は試したものの、門番のはずのアークは全く応えてくれない。 もし、シリウスが死ぬまでアークが門番のままでいてくれるのならば、向こうで謝りたいのと、「父さんがいたから俺は幸せになれた」と言って、「ありがとう」と伝えたい。 父アークがいなくなって約九年。家族周りには父に話したい出来事が山のように、本当に色々と起こっ
急いでいる時は魔法で服を吹っ飛ばして行為に及ぶこともあるシリウスだが、今回は最初から丁寧にするつもりらしく、まずはキスから始まった。 チュクチュクと口内をねぶられて吸われ、舌がからまり合う音が二人の部屋に響く。性器を受け入れることもだが、キスはお互いの体の一部を明け渡すことで、自分の気持ちも一緒に相手に捧げられるように感じられて、ナディアはとても好きだった。 そんなことを考えてしまったせいか、ナディアは早くもシリウスのペニスを口で受け止めてしゃぶりたくなってしまい、キスされながら服を脱がせられておっぱいを露出させられる傍ら、自分は彼の股間に手を伸ばしてシリウスの服をそこだけ乱し、そそり勃つ立派な男根を外気にさらして手で擦り始めた。「気持ちいいよナディアちゃん……」 シリウスはナディアの胸の頂きに吸いつき舌を這わせながら、時々口を離して吐息を漏らし、色っぽい声で喘いでいる。 猛烈な色気を醸し出すシリウスに当てられて、ナディアの局所もこの人が欲しいとビチャビチャに濡れてくる。 嗅覚でナディアの愛液が漏れ出していることに気づいたらしきシリウスは、胸を揉んでいた片側の手を下ろすと、ショーツの隙間から手を侵入させ、指で秘芽と秘裂を捉えて愛撫を始めた。 シリウスは、長年意識のないナディアに悪戯を仕掛け続けたこともあってか、手淫が目茶苦茶に上手い。 ナディアの弱点とも呼べるクリトリスを指先で刺激し、どこをどうすれば良くなるのかわかりきっている膣内を、挿入した二本の指を動かして巧みに責めてくる。「あっ……! もういっちゃ……っ! あぁぅっ!」 大好きなシリウスの指に、大事な場所を気持ちよくいじられている満足感と安心感から、ナディアはそれほど経たずにすぐに果ててしまい、指を中で咥え込むようにきつく締めつけながら潮まで吹いて達した。「濡れちゃうね。全部脱ごうね」 ぐったりとしたナディアの体を支えながら、シリウスはナディアの火照った体にキスを落としつつ、全ての服を脱がせると、自身も全裸になった。 大きな陰茎に目が釘付けになっているナディアに気づいたシリウスは、ナディアに四つん這いになるように言うと自分はベッドの上で膝立ちになり、ナディアの顔の前に巨根を突き出してきた。 ナディアは喜び勇んで大きな肉棒に吸いつき、手も使いながら舌や頭を動かして、夢中
ヴィクトリア姉様が子供を生んだそうなので、ナディアは番であり、義父アークの喪が明けてから婚姻届を提出して夫にもなったシリウスと共に、かつてお世話になった異母兄ロータスたちの家にお邪魔した。 どうしてこうなったのか、ナディアは死んでいた時があったので経緯はよくわからないが、ヴィクトリアは故郷の里の元住人で幼馴染のアルベールと番になっていた。 二人が番になったと聞いた時は、「なんでリュージュじゃないのーっ!」と、ナディアは驚いて叫んでしまっていた。 アークの葬儀や、人間の「ナディア」として擬態するための様々なことなどが一区切りついた頃に、彼らの元へ向かった時には、それなりにアルベールと幸せそうに暮らしているヴィクトリアがいて、ナディアは心配が杞憂に終わったようだと知って安堵した。 ナディアが故郷にいた頃の記憶では、アルベールは里にいるその他大勢のろくでなし連中と同じく、傲岸不遜で暴力的で意地が悪くて、あまり仲よくしたくない類の男だった。 けれど数年ぶりに再会してみると、「ヴィクトリアは俺のもの」的オーラを振りまきつつ独占欲は垣間見えながらも、アルベールは産後で体調が優れないヴィクトリアを常に気にかけるような優しさを発揮していて、始終笑顔全開のデレッデレな状態にもなっていて、とても幸せそうだった。 正直、こんなによく笑顔を見せる男だっただろうかと、印象はかなり様変わりした。 その後に、ナディアはヴィクトリアが生んだ、彼女によく似た綺麗な顔立ちの赤子と対面した。ヴィクトリア譲りの神秘的な銀の髪も持つ、アンジェと名付けられた生まれたばかりのその女児は、とても小さくて、有り得ないくらい可愛かった。 アンジェ抱っこさせてもらうと、自分の子供でもないのに、ナディアは体の奥から愛しさがこみ上げくるのを自覚した。 アンジェの瞳の色はアルベールと同じ金色で、『二人の愛の結晶なんだなぁ』ということもしみじみと感じた。 ナディアはその後、現在暮らしているブラッドレイ邸に帰宅してから、「私も赤ちゃんが欲しいな……」と思わずつぶやいてしまったが、「じゃあ作ろうか」とシリウスにさらりと言われて、少し戸惑った。「でも、レオもジークもまだ赤ちゃんだし、もう少し先でもいいかな」 番を失った義母のロゼは体調が優れない日もあって、ナディアがシリウスの下の弟たちの母親代わりを務める
門番から鍵を奪い、「冥界の門」の内側に入ったアークの視界は、何もない、一面の暗黒に覆われていた。 しかし暗闇に包まれていたのは、一瞬にも満たないようなわずかな時間だけで、あっという間に肉体が侵食されて崩壊し、苦しみも感じずに死んだ後は、一転、周囲からの温かな光を感じた。 肉体が滅び、幽体だけの状態となってまぶたを開ければ、見渡せる限りの地面には草原と花畑が茂り、上を見れば澄んだ青い空がどこまでも広がっていて、彩りに満ちた常春の世界にアークは立っていた。 死者となり冥界の住人になったことで、生きたままでは見えなかったものが見えるようになったようだ。 幽体の彼は死んだ時の年齢ではなくて、大好きすぎる長男ジュリアスの年齢に近い、二十代前半頃の若い容姿に戻っていて、銃騎士隊の隊服を着たままだった。 巨大な「冥界の門」はすぐ近くにあって、自分のそばには鍵もある。 アークは魔法を使って、扉の外に出てしまった「こちら側」由来のものをできる限り中に引き込むと、扉を動かして門を閉じ、鍵を鍵穴に差し込んでガチャリと施錠した。 扉を閉じている最中も、今も、「あちら側」で死んだ魂が次々と扉を通って、「こちら側」へやって来ていた。 死んで「冥界の門」をくぐると、彼らは輪廻の仕組みを思い出すようで、この世界に迷いなく降り立つと、「あの世」の端に位置する「冥界の門」から離れ、先へと進んで行く。 アークもそうだったが、幽体だった時の記憶は幽体になることでしか思い出せないようで、いずれ「この世」に転生すればまた忘れてしまうのだろう。 アークは巨大な「冥界の門」が建つ、苔生した石造りの土台に腰を下ろした。 通りすぎる死者たちがちらちらと彼の持つ門の鍵を見ている。 鍵で門を開き現世に戻れば生き返れる場合もあって、未練を残す者たちに鍵を奪われる可能性もあったが、そもそも魔力がなければこの鍵は扱えない。 それに精神の世界とも呼べる「あの世」では、魔法使いは最強であり、やろうと思えば対象の魂を滅して二度と存在できないようにすることも可能だ。魔法使いを脅して門を開けさせようとする不届き者も、あまりいない。 アークから少し離れたところにはシドの魂がいて、しばらくこちらを凝視していたが、どうやらアークには勝てないと悟ったらしく、他の魂と同様に、奥へ向かう人々に混じり去っていっ
とにかく人がたくさんいる場所に行けば何とかなるだろうと思った元門番の男は、首都がある方向へ向かった。 ところが、彼の予想に反し、シドが暴れ出した情報が独り歩きした結果、「暴れ出したシドによって大量殺戮が始まってる」とか、「シド率いる大勢の獣人たちが現れて首都一部壊滅状態」とか、首都では正しくない情報であふれていて、シドの処刑は既に執行されたにも関わらず、偽情報に踊らされた人々は大混乱に陥っていた。 デマではあっても命の危機が迫る情報によって、逃げようとしたり、家に閉じ篭もって恐怖する人々が大多数で、愛の営みをしている者たちが全く見つからない。(こんな状態で、真っ昼間から悠長にセックスしとる奴らなんて、おるわけないか……) 彼は絶望的な気分に襲われながらフラフラと空中をさまよっていたが、ふと、「あの世」に引っ張られる力とは別方向の力がグッと自分にかかったのを感じて、ハッとその方向を見た。「もうすぐ新しい命が宿る場所」を示す、例の光が発生している場合、魂をそこに引き込む力も同時に発生する。(最中の奴らがおる! 天の導きや!) 彼は歓喜しながら、導かれる方向へと急ぎ向かった。 ******「孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕め孕めえぇぇぇッ……っ!」「あぁっ! あ゙っ! おんぐっ! お゙ん゙っ! ぉんおお゙お゙っ! おゴォっ! ほごぉおおお゙ッっ……!♡」 たどり着いた先では、黒髪に、銀色という珍しい瞳の色をした筋肉質で大柄な男と、二十歳前後ほどの黒髪の女が部屋の中で交わっていた。 が、男は吐精直前の激すぎる突き上げの最中でも女の首を掴んで締めているし、女の方も足先をバタつかせてはいるものの、今にも白目を剥いて気絶しそうなその表情には、隠し切れない恍惚の色が浮かんでいた。 二人は完全に出来上がっているが、いきなりそんなハードプレイ場面に出くわしてしまった元門番の男は、ドン引きしていた。 彼は引っ張られる力に従い、首都の一角にある大豪邸にやって来ていた。商人をしていた前世の記憶を頼りに、そこがアンバー公爵邸であることには気づいたが……(ここ、公爵家? ホンマに公爵家? 凌辱の館とかじゃなくて?) 由緒正しき公爵家の一室で繰り広げられている、殺人現場もかくやという光景には唖然とする
「隊長! 話が違うじゃないですか!」 ようやく見つけた銃騎士隊一番隊長ジョージ・ラドセンド卿にゼウスは食ってかかる。 ジョージは上品な物腰の白髪の老紳士で、若い頃はさぞおモテになられたのだろうという風貌をした「年を取ってもまだまだイケメン」の代表格だった。ジョージの背筋はしゃんとしていて馬に乗る姿は六十代とは思えないほど若々しく、まだまだ現役といった様子だ。 ジョージは元々平民であったが貴族の娘と結婚し、のちに伯爵位を賜り銃騎士でありながらも貴族である。 ジョージは肩を怒らせながら現れたゼウスとその後ろにいるシャルロット公爵令嬢を見て、何があったのかを察したようだった。ジョージ
シャルロットがゼウスに並々ならぬ思いを寄せていることはゼウス自身も知っていた。 シャルロットとの婚約を上司を通して財務大臣から打診されること計五回。 銃騎士隊員として何か特段の成果を上げたわけでもなくただの一平民にすぎない自分が公爵令嬢を嫁にもらうだなんておこがましすぎると断ろうとしたが、上司曰く「婚姻に際してはどこかの貴族の養子になることが条件で、嫁が来るのではなく婿に行く」という話だった。 ゼウスは貴族に良い印象を持っていなかったので自分が貴族になるなどとは考えたくもなかった。「今は職務に邁進したいので結婚は考えていない」と上司には断ってもらい、毎回同じ理由で断り続けている。 し
「どうしたゼウス、もっと笑え」 吐き出す息は白く寒さが身に沁みる。街路で沸き立つ群衆もそれは同じはずなのだが、熱気を含んだ視線や歓声を上げている彼らは、あまり寒さを感じていないような気がする。 銃騎士隊が隊列を組んで首都の大通りを練り歩くのは恒例となっている新年の祝賀行事だ。 馬にまたがりパレードの先頭を行く一際目立つ容姿端麗な二人組のうちの一人、黒髪の青年――レイン・グランフェル――が、隣で先程から民衆に向かってニコリとも笑わない金髪の青年――ゼウス・エヴァンズ――に話しかけていた。 先頭という目立つ位置で会話などしていたら後で上官に怒られそうな気もするが、パレード自体が和やかな雰
【登場人物紹介】 登場順(次章パレード編まで)。獣人に名字はありません。年齢はパレード編以降のものです。「獣人姫…」のネタバレを含みます。 ❖ナディア/メリッサ・ヘインズ(18) 茶色の髪と瞳。獣人であるが容姿に華やかさがないことを気にしている。獣人王シドの娘。❖シリウス・ブラッドレイ/オリオン/ミランダ(20) 魔法使い。銃騎士隊諜報員。ブラッドレイ家次男。白金髪に灰色の瞳。姿替えの魔法で茶色い髪と瞳の少年姿になり「オリオン」と名乗っていることが多い。❖ゼウス・エヴァンズ(19) 銃騎士隊一番隊所属。金髪碧眼。女嫌い。獣人を憎んでいる。❖ジュリアス・ブラッドレイ 銃騎士隊二







